研究概要 |
本年度(最終年度)では、これまで得られた循環生理情報の無侵襲あるいは無拘束多機能計測法と、これに基づく実験用システムを多くの被験者に適用し、そのデータ分析を通して総合的評価の研究を展開した。以下,主な成果の概要を箇条書きにする。 1.容積振動法と胸部電気的アドミタンス法との併用に基づく循環動態機能計測システムの試用とデータ解析から、血圧日内変動は末梢循環低抗調節に起因する場合と心機能調節に起因する場合とがあることを見い出し、循環器疾患によっては両者の因子が拮抗的に働き、通常見られる血圧日内変動がマスクされていまことを立証した。 2.我々が以前開発した容積補償法と前記のアドミタンス法とを併用し、一心拍毎の循環諸情報を同時計測できる親規の方法を考案した。その試用を通し、自律神経系を介する心蔵への圧受容体反射による血圧調節(3-6心拍で起こる速い調節機構)と末梢循環抵抗調節による血圧調節(10-15心拍遅れて起こる遅い調節)を無侵襲的に評価することに成功した。 3.体肢循環生理情報を多機能計測できるアドミタンス・カフシステムの試用を通し、例えば運動負荷に伴う血流量と毛細管漉過率の関係、毛細管動員による物質(水分)透過性の抗進など、従来動物実験による侵襲的方法でしか得られなかった末梢循環機能を無侵襲で計測出来ることを実証した。 4.2波長分光容積振動法に基づく装置の試用を通し、本法が血圧と同時に動・静脈酸素飽和度(OS)は勿論、従来のパルスオキシメータより広範囲のOS測定に有効であり、また本研究で用いたキュベット血液層モデルがOS較正器にも利用可能であることが判った。 5.以上の一連の実験的研究を通し、本研究で提案された無侵襲多機能計測法は、通常の生理学的使用範囲で、十分実用に供し得る方法であり、基礎・臨床医学、スポーツ医学、スクリーニング、在宅医療など多方面への応用に有力な武器となろう。
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