1)酵母遺伝子の基礎発現量制御機構の解析と高発現宿主構築への応用 酸性ホスファターゼをコードするPH05遺伝子をレポーターとして、転写活性化因子の不在下でも生産量が上昇した多くの変異株(be1変異と命名)を分離した。bel変異株の解析から、bel変異が染色体の高次構造の変化を介して多くの遺伝子の転写に影響を及ぼす可能性を示唆した。bel変異を宿主として使えば、プロモーターの強さをさらに増強させることができると提案した。 2)酵母の接合型制御機構の解明と温度制御可能な宿主・ベクター系の開発への応用 酵母の接合型の新しい制御遺伝子、AAR1、を見いだした。AAR1遺伝子は、様々な制御系で遺伝子特異的な転写抑制因子と相互作用して転写を抑制するglobalリプレッサーであることを明らかにした。接合型情報のレプレッサーSIR3遺伝子の温度感受性変異、sir3-8^<ts>、と接合型制御タンパクの変異、hmlα2-102、を組み合わせ、温度による制御が可能な宿主・ベクター系を構築した。 3)高発現プロモーターを持つ酵母のリン酸取り込み系遺伝子PH084の解析 酵母のリン酸のトランスポーターコードしているPH084遺伝子のプロモータが強力であることを見いだした。PH084の転写に必要なPH081遺伝子の温度感受性変異とPH084遺伝子のプロモータを組み合わせ、温度による制御が可能な宿主・ベクター系を構築した。これを、イネα-アミラーゼの分泌生産に応用したところ、期待通りの有用性が確認された。 4)遺伝工学的物質生産の宿主としての利用を目指した醸造酵母形質転換系の開発 旺盛な増殖力、長年に渡って醸造や食品製造に用いられてきた安全性などの有用な特性を持っている醸造酵母を遺伝子工学的物質生産の宿主として用いることができるような基盤を整えるため、セルレニン耐性を利用して醸造酵母に効率よく組換えDNAを導入する条件を確立した。
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