研究概要 |
植物においては細胞核に含まれるDNA量(ゲノム容積と呼ぶことにする)が計量形質と強い相関を持つことが知られている.本研究はイネ品種間のゲノム容積の変異とその計量形質との関係を調査することを1つの目的とする.さらに4倍体照射法によって得られた突然変異系統においても同様の調査を行い,ゲノム容積の変異を用いた育種の可能性について研究する.本年度の結果を要約すると以下の通りである. 1.ゲノム容積の測定 a.各変異系統および既存品種について蛍光染料(DAPI)で染色した分裂後期の細胞でDNA量(相対量)を測定した.イネの品種間にはDNA量に大きな差があり(〜1.5倍),突然変異系統のDNA量もその範囲内にあった. b.化学的手法によりDNAを定量し細胞当りの絶対量を推定したところ,細胞当り1〜1.5pgと今までの報告と似た値が得られた. c.興味ある知見としてコシヒカリがDNA量が多く,両親である農林1号と農林22号は少ないことが明らかとなった. d.測定の方法として減数分裂期直後の四分子細胞の利用を試みたがバックグラウンドが高く,工夫が必要であることが分かった. 2.ゲノム容積と計量形質の関係 a.花粉の体積とDNA量の間には強い正の相関のあることが分かった. b.品種間,系統間の出穂期の差は遺伝子の支配とは別にゲノム容積が大きいほど遅くなる傾向を示すこが明らかとなった. c.品種間,系統間でいくつかの計量形質の間に相関のあることが分かった.ゲノム容積との関係を調査中である.
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