研究概要 |
突然変異誘発遺伝子(mutator)の分子遺伝学的解析を行うに当たって必要な基礎的情報を得るため,mutatorの作用発現と強く関連する細粒遺伝子(slg(t)と仮称)の座乗位置の決定を試みた.トリソミック分析(第5,6,8,9,10,11および12染色体)並びに標識遺伝子を用いた連鎖分析(lax;第1染色体,ghー2;第2染色体,bcー1;第3染色体,lg;第4染色体,gー1,Rc,e_1;第7染色体)を行った結果,slg(t)と第7染色体に座乗する標識遺伝子gー1,Rcおよびe_1との間に連鎖関係が検出され,slg(t)の連鎖地図上の座乗位置が明らかになった. 上記実験とは別に,細粒系統中の粒型復帰個体に高頻度で出現する〓先着色に関与する遺伝子を明らかにするため,葉身,〓先および果皮にアントシアン(ac)着色のみられる標識遺伝子系統(紫葉T系統)と1細粒系統IM294との交配後代F_3系統を供試し,ac着色形質に関する分離分析を行った結果,葉身,〓先および果皮の着色に関与するac遺伝子間相互作用についてこれまでの報告と矛盾しない結果が得られたほか,IM294のこれら遺伝子に関する遺伝子型を推定することが出来た.この遺伝子間相互作用およびIM294の遺伝子型を基に考察すると,IM294の系統内に出現する粒型復帰個体の内の〓先着色個体は,A^+遺伝子がA遺伝子に変化した結果生じたものであると推察され,A座の遺伝子はmutatorの作用を受けやすい遺伝子の一つであり,A座の遺伝子について分子遺伝学的解析を行うことによってmutatorの作用機構の一端が明らかになることが示唆された.また,紫葉T系統とIM294より抽出したDNAを供試し,トウモロコシのac遺伝子C1,C2およびA1のクロ-ンをプロ-ブとして用い,サザンハイブリダイゼ-ションを行った結果,いずれのプロ-ブを用いた場合にも明瞭なバンドが検出された.さらに,A1遺伝子のクロ-ンをプロ-ブとして用いた場合にはRFLPが観察され,イネac遺伝子座のいずれかが紫葉T系統とIM294との間で多型を示す可能性が示唆された.
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