研究概要 |
イネ科植物が1年以上生存するためには出穂期以降も新しい茎が発生して生育を継続しなくてはならない。そこで,24時間日長・適温条件下でも1年以内に枯死する1年生的性質の強いOryza glaberrimaの1系統(W492)と,適温条件を与えれば1年以上生存を続ける多年生的性質の強いOryza sativaの1品種(農林22号)の出穂期以降の炭水化物の転流と生育を比較した。 予備試験の結果から,1年生では穂への転流が出穂期以降の比較的早い時期に完了するのに対し,多年生では徐々に転流して成熟することがわかった。しかし,本年度では茎の強度の低いO,glaberrimaが2度の台風の被害を強くうけたため,この点について確認することが出来なかった。 株の部分のでんぷん含有率は,1年生では出穂期から低く,時間の経過にともなってさらに低下した。多年生では出穂期に1年生よりも高く,3週目まで低下したあと成熟期に近ずくにしたがって再度上昇して,株の部分に炭水化物を貯蔵することを示した。 1年生では出穂後葉面積が急速に減少してゆくのに対し,多年生では減少傾向がゆるやかであった。1枚の葉の生存期間は11葉目まではほぼ同じであったが、12葉から17葉までは1年生の方が短かかった。このことはとくに14葉以上で著しかった。この間の葉の老化の程度をクロロフィル含量の変化でみると,出葉した直後から1年生の方がやや低い状態にあり,1年生は多年生に比べて短かい期間で急速に低下してゆく傾向があった。 ^<13>CO_2を使った光合成産物の植物体各部への転流については,採取したサンプルについて現在測定中である。この植物体各部への炭水化物の分配のデ-タがそろい次第,乾物,でんぷん含有率,葉の老化についてのデ-タを含めて検討し,発表する予定である。
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