研究概要 |
1年生と多年生の生育の違いは主に出穂期以降にあらわれる。そこで24時間日長・適温条件下でも1年以内に枯死する1年生的性質のつよいOryza glaberrimaの1系統(W492)と,適温条件さえ与えれば1年以上生存を続ける多年生的性質の強いOryza Sativaの1品種(農林22号)の出穂期以降の生育を乾物・でんぷんの集積,葉の老化,同化産物の転流経過の面から比較した。 1.乾物の穂への集積は,発熟初期に1年生の方が多いという傾向はわずかにみられるものの両種ともほぼ同じような傾向を示した。このことは予備試験の結果と一致しなかった。株の部分へのでんぷんの蓄積は,1年生では出穂期から成熟期までほとんどみられなかった。これに対し多年生では出穂期に20%の値を示し,成熟に向うにしたがって減少したが成熟期でも5%の値を示した。 2.出穂後のクロロフィル含量,窒素含量,葉緑素計のSPAD値はどの時点でも多年生の方が高かった。多年生は成熟に向ってゆるやかに減少してゆくのに対し,1年生はある時点から急げきに減少し,1年生の方が葉の老化が早いことを示した。プロテア-ゼの活性は葉の老化の指標として適切ではないと判断した。 3. ^<13>Cの穂への分布割合は,多年生では5週目まで高く,6週目になると低下して茎部の分布割合が高くなった。1年生では4週以降穂への分布割合が低下して茎部への分布割合が高くなった。 ^<13>C同化量は多年生ではゆるやかに減少してゆくが,1年生では葉面積の減少によって ^<13>C同化量自身が著しく減少するので,茎部に行く炭水化物は極めて少いと推測した。 これからは,今までに得られた農林22号(多年生)とW492(1年生)の違いが,1年生と多年生の違いとして一般化できるかどうかを多くの品種を使って検討したい。
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