研究概要 |
初年度において,日本型品種,日印交雑品種およびF_1雑種とその両親を比較しつつ多収性の要因を検討し,光合成速度を指標とした葉身の老化の遅いことが重要な性質の一つであることを明らかにした. この中の代表的な品種日本晴とアケノホシを用いて,葉身の老化と密接に関係する出液中のサイトカイニンの量的,質的相違を同位体希釈法で調べた.その結果,老化の遅いアケノホシでは登熟最盛期に地上部へ送られるゼアチン,リボシルゼアチン,イソペンテニルアデノシンが日本晴より多く,とくに今まで貯蔵型サイトカイニンと考えられていた結合型ゼアチンが出液中に最も多く認められ,この量も日本晴より多かった.このことから,根でつくられ,地上部へ送られるサイトカイニンは葉身の老化を遅らせたり促進したりするのに大きく作用しており,その中でも結合型サイトカイニンが最も重要であることが明らかとなった(石原).さらに画像解析法を用いて日本晴とアケノホシの根を比較したところ,出液速度が大きく,長く続くアケノホシでは,とくに2次根,3次根などの細い根が長く,これによって全根長も日本晴より長いことを認めた(平沢).水稲の株を構成する茎間の同伸葉の光合成速度を比較したところ,穂数型品種日本晴では,主茎の葉身に比べて,その葉身と同伸葉の第1次分げつ茎の老化が早く,光合成速度の低下程度が大きかった.この光合成速度の低下には,気孔におけるガス交換速度を表わす拡散伝導度,クロロフィル含量およびRuBPカルボキシラ-ゼ含量の低下が関係していた.主茎と分げつ茎の同伸葉の老化の違いには品種間差があり,長稈穂重型品種台農67号では,老化の違いが小さく,茎間の光合成速度の相違は小さかった(大川).
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