研究概要 |
耕地への有機物施用は地力維持,資源の再利用からも有意義であり,単なる養分補給だけではなく,活性化された微生物群が演ずるダイナミックな物質循環による養分供給能の向上,微生物フロラの多様化にともなう静菌作用などの様々な効果が期待できる.これらはいずれも土壌微生物が主要な役割をもつものであり,その意味において土壌中における有機物の質と量,分解と蓄積など土壌中での炭素の動態を微生物活性と関連づけて解明することは重要である. 本研究では,トウモロコシーオオムギ連作畑における有機物の施用効果を明らかにする目的で,土壌微生物活性と関連が深い土壌CO_2発生速度を測定し,これに関与する温度と土壌水分の関係を解析した.トウモロコシーオオムギ連作畑から採取した土壌からのCO_2発生速度は土壌中全炭素含有量,温度に強く支配されていることは明かであり,土壌中の有機物分解には酵素反応速度論(金野,杉原1986)が適用できることを確認した.これにもとづき,連作2年間の有機物還元量(株,根,リタ-),日平均気温から土壌中(0〜15cm)の土壌有機物分解量を推定した結果,推定値と土壌分析による実測値は概ね一致することが認められた.また,有機物分解速度には土壌水分も影響し,微生物活性に最適な土壌含水比の範囲(24〜37%)以外では分解速度が減少することが明かであった.トウモロコシ作期中(潅水区)の土壌含水比の実測値を用いて前述の有機物分解速度を補正した結果,土壌有機物分解量は約6%減少すると推定された. 以上のことから,土壌有機物の分解は酵素反応速度論に基づいており,土壌有機物の分解および蓄積は温度と土壌水分の時間的変動を考慮することにより数カ月〜数年間にわたって定量的に解析できるものと判断された.
|