研究概要 |
土壌中における有機物の分解は土壌微生物が関与しており,その分野速度は温度に強く支配されている.昨年度(平成2年度)の畑土壌(トウモロコシーオオムギ連作圃場)を用いた実験によって,土壌中の有機炭素の分解は以下の2つの式と各時期の日平均気温を用いることによって推定できることを示した. S=S0・{1ーEXP(ーK・t)}……(1)、K=ーA・EXP(Ea/R・T)……(2) 本年度(平成3年度)は,上記の土壌中における炭素の分解モデルを畑土壌だけでなく水田土壌など土性の異なる土壌に適用して土壌中炭素の分解量を推定し,さらにこれら土壌を用いた5〜15年間の長期圃場試験の土壌分析の結果とを照合した.鳥取大学附属農場と鳥取農試における7〜15年間の長期有機物連用試験水田および大山黒ボク畑土壌を14,22,30,38℃の恒温条件で5ケ月間培養して土壌からのCO2放出量を測定したところ,上記の2式がともに成立することが確認できた.実験によって得られたバラメ-タと7〜15年間の日平均気温から推定した土壌中炭素含有量と長期有機物連用試験圃場の土壌分析の結果を比較したところ,両者は概ね一致することを認めた. 以上のことから,畑土壌だけでなく水田土壌,黒ボク土壌においても,圃場条件下における土壌有機物の分解はアレニウスの法則に基づいており,(1),(2)式を用いることにより温度の季節変化を考慮した数カ月〜数年間の土壌有機物の分解と蓄積について定量的に解析できるものと判断された.なお,恒温条件での培養実験で得られた有機物分解量は実際圃場での分解量よりやや高い傾向があることが認められ,土壌を採取する時に土壌構造や土壌微生物相を可能な限り破壊しないようにする必要があることが指摘された.
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