研究概要 |
耕地への有機物施用は地力維持や資源の再利用からも有意義であり,養分供給能の向上,土壌物理性の改善,多様な微生物による靜菌作用などの様々な効果が期待できる.この有機物の施用効果の大きさや持続期間を正しく評価するには,土壌中での炭素の動態を定量的に把握することが重要である. 本研究では,土壌有機物の分解・集積について定量的に解析する目的で,土壌微生物活性と関連が深い土壌CO2発生速度を測定し,これに関与する温度と土壌水分の関係を検討した.平成2年度においては,トウモロコシーオオムギ連作畑(京大農学部圃場で実施)から採取した土壌からのCO2発生は温度に強く支配され,土壌有機物の分解はアレニウスの法則が適用でき,以下に示す2つの式で推定できることを明らかにした. S=SO・{1ーEXP(-K・t)}・・・・・(1)、K=-A・EXP(Ea/R・T)・・・・・(2) これらの式と連作4年間の有機物還元量,日平均気温から土壌中の土壌有機物分解量を推定した結果,推定値と土壌分析による実測値が一致することを認めた.また、有機物分解速度には土壌水分も影響し,微生物活性に最適な土壌含水比の範囲(24〜37%)が存在することも明かとなり,トウモロコシ作期中の土壌含水比の実測値を用いて前述の有機物分解速度を補正した結果,土壌の乾燥により有機物分解量は約6%減少すると推定された. 平成3年度においては、鳥取大学農学部圃場および鳥取農試における7〜15年間の長期有機物連用試験圃場の水田土壌について上記と同様の分解モデルの適用を試みた.各供試土壌を5カ月培養(14,22,30,38℃)して得られた分解パラメ-タと日平均気温を用いて推定した土壌炭素含有量と長期有機物連用試験圃場の炭素含有量を比較した結果,両者は概ね一致することを確認した。
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