研究概要 |
植物細胞の誘導抵抗性の機構と関連し、ナス科植物(ジャガイモ、トマト、ピ-マンおよびタバコ)の懸濁培養細胞では、Phytophthora属菌の菌体壁成分がエリシタ-となって過敏感細胞死を起こし、その細胞死は、供試したP.infestans,P.capsiciおよびP.nicotianae var.nicotianaeの水溶性グルカンによって宿主選択的に阻害されることを示してきた。この懸濁細胞の過敏感細胞反応の始動時には活性酸素が生成することをルミノ-ルを介した化学発光で検出し、細胞死抑制活性を示す水溶性グルカンはその活性化を阻害した。P.infestansのレ-ス0およびレ-ス1.2.3.4の遊走子発芽および侵入過程には比活性の高いグルカンが放出され、前者では中性と陰イオン性グルカンが、後者には陰イオン性グルカンのみが含まれていた。陰イオン性グルカンのTSKーGEL3000のカラムを用いたHPLC分析で、異なった宿主に対して選択的活性を示す数種のサプレッサ-グルカンが分画された。活性酸素生成系の活性化に関連し、エリシタ-と反応した懸濁細胞では膜結合型のCa^<++>が急速に遊離し、細胞内Ca^<++>が急速に増加する現象が、それぞれクロロテトラサイクリンおよびFluoー3というCa^<++>の蛍光検出薬により判明した。一方、Ca^<++>のキレ-ト剤のEGTAはそれらのCa^<++>の変動を阻害し、同時に活性酸素生成系の活性化も阻害した。また、活性酸素生成系の活性化に、GTP結合蛋白、CA^<++>ーカルモジュリン依存キナ-ゼの関与を示唆する結果が得られた。Alternaria alternata tomato pathotypeの生産する宿主特異的毒素のALーtoxinは感受性トマト品種のホスファチジルエタノ-ルアミン生合成系を阻害することが判明した。また、A.alternate strawberry pathotypeの生産するAFーtoxinは感受性イチゴ品種の懸濁培養細胞ならびにそのプロトプラストにも特異的に作用し、それらの系で毒素作用の定量的解明が可能となった。
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