研究概要 |
植物病原糸状菌の感染およびエリシターに対する植物細胞の応答における情報伝達機構、ならびに病原菌の生産する選択的寄生性成立物質の宿主情報伝達機構の制御と病原体受容について解析し、これらに関する研究の現状と課題について論じた。ジャガイモ植物細胞はPhytophthora属菌の非親和性菌の感染や菌体エリシター(HWC)に対して過敏感細胞応答を示し、活性酸素生成系(SOX)、ホスフォリパーゼA_2(PLA_2)、リポキシゲナーゼ(LOX)とそれに関連する酵素系が一過性に活性化され、脂質過酸化反応が抵抗性を誘導に関与することを示した。SOXの活性化には、シグナル伝達に関連する、Gタンパク質、Ca^<++>、カリモジュリン(CaM)、Ca^<++>またはCa D1++ D1/CaM依存プロテインキナーゼの関与を示唆し ATP,Ca^<++>、可溶性タンパク質分画と原形質膜分画を含む無細胞系でHWC刺激によるSOXの活性化を示した。HWCによる各種のナス科植物の懸濁培養細胞の刺激は、即時的な膜結合Ca^<++>の遊離化を示唆し、1分後にはSOXの活性化が続くことを示し、細胞応答の開始におけるCa^<++>チャンネルとSOXの重要性を示唆した。Phytophthora属菌の水溶性グルカンが細胞の過敏感反応のサプレッサーとして宿主選択に重要な機能を果たすことを示唆した。このサプレッサーはHWCに対する細胞応答のCa^<++>の動き、SOXの活性化および過敏感細胞死の誘起を種特異的に抑制することを示唆した。一方、選択的病原体受容の誘導物質であるAlternaria alternataのAF毒素とAL毒素の作用機構を解析し、前者は感受性イチゴ品種の原形質膜を第一義的作用点とし、毒素に対する受容体と反応することを指摘した。AL毒素は膜リン脂質のホスファチジルエタノルアミン合成系のホスホエタノールアミントランスフェラーゼを標的として作用し、さらにBiolaris zeicola race3の生産するBZR毒素が4つの補毒素が4つの補毒素の相乗効果により感染選択シグナルになることを示した。
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