研究概要 |
翅型二型を持つイネ害虫ヒメトビウンカの体色変化,幼虫発育期間の日長感受性を支配する遺伝的機構及び翅型発現性との相関を調べた。ヒメトビウンカ短翅雌成虫には白,黒,中間色の体色変異があり,雄成虫には長短翅とも小楯板に白条のあるものと無いものがある。これらの体色に関する交雑実験の結果,体色変異は遺伝的に決まっているが,雌雄間では体色変異は独立していることが分かった。また体色に関する選抜実験の結果,雌では選抜第1世代目から,また雄では第5世代目以降明瞭な分離がみられた。さらにこれら体色別の選抜系統の内雌を白,又は黒とした組み合わせでは雌の体色を選ばなかった組み合わせに比べ,短翅率が著しく高まった。雄では,翅型選抜を行っても通常翅雄は殆ど出現しないが,黒雌×条雄の組み合わせで短翅雄率が著しく高まった。ヒメトビウンカの幼虫は短日,低黒下で休眠に入るが,短日高温下においても一部の個体の発育が著しく遅延する。この短日下における発育の日長感受性の異なるものに関して交雑実験を行ったところ,この性質は遺伝的であることが分かった。さらに15世代以上翅型に関して選抜した系統の日長反応性を調べたところ長翅系統で発育遅延個体が高率に現れることが分かった。さらに体色,日長反応性と幼虫期の密度の関係を調べたところ,体色は高密度で黒化し,発育遅延率も密度に依存して高まるとしう,翅型密度反応と類似した傾向がみられた。以上より,翅型,体色,日長反応性の形質は共通の生理的制御機構により支配されていると考えられ,幼若ホルモンが関与している可能性が示唆された。
|