研究概要 |
1)土壌中の金属元素の挙動に与える影響 本年度は土壌中における重金属の存在形態が土壌の酸性化にともなってどのように変化するかについて検討した。土壌試料は農工大桑園土壌,栃木県足尾町重金属汚染土壌,熊本県阿蘇桑園土壌を用いた。土壌pHは7.0,6.0,5.0および4.0の4段階に調整し,10日間incubateした。 分析の方法はTessierの方法を若干修正した方法で,交換態画分,炭酸塩結合態画分,有機物結合態画分,残渣画分の5画分に分けられた。 その結果,土壌pHが低下するとCd,Pb,Znのいずれもが交換態画分に多く存在するようになることが明らかになった。また,それぞれ重金属別にみると一般的にCdは交換態画分に,Pbは有機態画分に,Znは残渣画分に多く存在する傾向がみられた。交換態画分の重金属は土壌との結合力が弱いので土壌が酸性化すると土壌中の重金属は植物に吸収されやすい状態になるものと推察された。 2)クワの生長とクワ器官中の無機元素の挙動に与える影響 本年度は開葉日を特定した(6月10日と6月25日)桑葉についてPH4.0とPH3.0の疑似酸性雨を噴霧して桑葉からの各元素の溶出量とクワ器官中の各元素量におよぼす影響について検討した。 その結果,桑葉からの各元素の溶出量はPH3.0>PH4.0>PH5.6と疑似酸性雨のpHの値い区など多くなること,さらにPH5.6区に対する各処理区の比率の大きさで疑似酸性雨による溶出のし易さをみるとMn>Zn>Mg≒Fe>Caの順であった。 桑器官の各元素の含有量はPH5.6>PH4.0>PH3.0となり,PHの低い区ほど少なくなっていた。桑葉以外の器官についてみるとMgとFeの根中含有量やMnとZnの新条中含有量が酸性度の強い区で低下していることから桑葉からの元素のリーチングに対して根や新条からの補給が考えられた。
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