本研究は、アフリカの典型的な低位生産土壌の乾燥下における水および土壌無機養分の動態が、作物生長に及ぼす影響を解析して、作物の耐干性と耐塩性を動的かつ総合的に把える方法を確立することを目的としている。そのためまず中空繊維系(ホロファイバー)を地中に埋設して、土壌溶液を吸引採取する装置を試作して作物根圏を破壊せずに、溶液中のイオンを継続的に計測する方法の有効性と限界を試験した。その結果従来のポーラスカップ法に比べ、より特定した微小領域から、平均的・連続的なサンプリングを行うことが可能となり、根圏土壌中の無機塩類の動態が、根域を破壊することなく経時的にモニターできるようになった。次に、この装置を用いて、(1)低位生産土壌の特性を明らかにする目的で、風化の進んだ赤黄色土(低位生産土壌)はじめ4種の土壌を用いてトウモロコシの生育試験を行ない、赤黄色土は他の褐色低地土、黒ボク土等に比べ、N、P_2O_5、Kいずれについても供給力および肥効が劣り、植物生長は抑えられること、作物の養水分吸収によってAR^K(カリの活動度比)は経時的に上昇するが、この値は土壌の種類によって、大きくことなることを明らかにした。土壌の乾燥、作物による養水分の吸収による土壌中の位置別の溶液イオン濃度変動が追跡できた。(2)作物種による耐干性の違いを土壌中溶液濃度の変化への対応を含めて解析する目的で上記赤黄色土を培地とし、アフリカ在来の作物とトウモロコシを用いて乾燥ストレス下での生育試験を行なった。その結果、乾燥ストレス耐性の大小は具体的には茎葉/根の乾物重比の相違に表われ、耐干性の大きいトウジンビエ、ソルガムは旺盛な根系の発達によって、より広範囲から養水分を吸収していること、また土壌乾燥の過程では土壌溶液濃度上昇よりむしろ土壌水分自体の減少がまず作物生長に影響していること、を明らかにした。
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