アクアライシンIの前駆体は、成熟酵素部分のN末端側にシグナル配列とプロ配列を、さらにC末端側にもプロ配列をもつ、4つのドメイン構造から成る。アクアライシンIの分泌と酵素蛋白質の折りたたみに果たしているN末端ならびにC末端両プロ配列の役割を明らかにすることを目的として実験を行った。 1.アクアライシンI前駆体のN末端プロ配列には、数種類のサチライシンのN末端プロ配列で保存されている6アミノ酸残基の配列と類似の配列がある。欠失変異の実験から、アクアライシンIのN末端プロ配列の6アミノ酸残基の配列は前駆体の安定化と活性ある酵素の生成に必須であることが分かった。部位指定変異により、この配列の中にアミノ酸置換変異を導入すると、活性ある成熟酵素を生成するものと生成しないものが見いだされた。したがって、この6アミノ酸残基の配列部分には活性ある酵素の生成に必須な残基があると考えられる。 2.精製した38K前駆体は大腸菌、好熱菌<Thermus>___ー <thermophilus>___ーから調製した細胞膜画分と結合するが、C末端プロ配列をもたない28K成熟酵素は結合できなかった。したがって、アクアライシンI前駆体のC末端プロ配列は前駆体の外膜との結合に必須であると考えられる。 3.C末端プロ配列のC末端から5アミノ酸残基以上が欠失した変異株では、前駆体は可溶性画分に見いだされた。C末端部分に前駆体の外膜との結合のシグナルがあるのか、それとも細胞質膜を通過できないために外膜と結合できないのかなど、いくつかの可能性が考えられる。
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