Xenobioticsと相互作用を示す植物二次代謝産物に関する研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454064
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 田原 哲士 北海道大学, 農学部, 助教授 (50001475)
• 研究分担者: 川端 潤 北海道大学, 農学部, 助教授 (60142197)
• キーワード: ベンズイミダゾール殺菌剤 / チュウブリン / 抗菌物質 / 解毒作用 / ベノミル / カルベンダジム / エモジン / ポリフェノール

研究概要

生体異物と相互作用を示す植物二次代謝産物研究のモデルとして、我々の見出したチュウブリン作用性殺菌剤カルベンダジム(MBC)に解毒作用を示すemodin(1)、5-methoxy-6、7-methylenedioxyflavone(2)の作用様式について検討した。結果は、以下のように要約される。
(1).抗MBC作用に関して、1とその類縁体の構造活性相関については、昨年度に解析したので、本年度は2の類縁体10種を調製し、Cladosporiumherbarumを検定菌として、抗MBC活性を調査した。その結果、天然物である2よりも抗MBC活性の大きなフラボンとして、無置換フラボンや5-methoxyflavoneを見出した。
(2).^<14>C-MBCを調製し、MBC感受性Neurospora crassaより48000g上清画分のDEAEセファデックス吸、脱着によりチュウブリン画分を得、^<14>C-MBCとの結合性を確認した。この結合性に対して、現象的に抗MBC作用を示すemodinは影響を与えなかった。この実験事実は、抗MBC作用物質の構造が、チュウブリンとの相互作用で有系分裂阻害を示す薬剤に類似していることから、単純にチュウブリンのMBC結合部位を抗MBC物質が競合することによって、MBCの阻害作用を解除しているであろうという予測には反するものである。実験材料および方法とも備ってきつつあるので、さらに抗MBC作用の機構解明に努める所存である。
(3).難防除植物病の原因菌となることが多い藻状菌類には、MBCのようなベンズイミダゾール系殺菌剤は効果が現れない。一方、zarilamideはチュウブリンに作用して藻状菌の細胞分裂を阻害する。MBCの作用を藻状菌類でも発現させられるような共力物質、zarilamideの藻状菌類に対する抗菌作用を解除するような抗zarilamide作用物質を、植物二次代謝産物中に探索中である。目的にかなうような化合物は、チュウブリン作用性化合物の作用様式を解明する有効な手立てとなるであろう。

研究成果

• [文献書誌] S.Tahara,M.Moriyama,J.L.Ingham and J.Mizutani: "Structure Revision of Piscidone,a MaJor Igoflavonoid in the Root Bark of Piscidia erythrina" Phytochemistry. 31. 679-682 (1992)
• [文献書誌] H.Gagnon,J.Seguin,E.Bleichert,S.Tahara and R.K.Ibrahiw: "Biosynthesis of White Lupin Isoflavonoids [U-^<14>C]L-Phenylalanine and thein Release into the culture Medium" Plant Physiology. 100. 76-79 (1992)
• [文献書誌] Y.Hashidoko,S.Tahara and J.Mizutani: "Sesquiterpere Hydrocarbons in Glandular Trichsme Exudate of Rosa rugosa Leaues" Zeitschrift fier Naturforschung. 47c. 353-359 (1992)
• [文献書誌] J.Kawabata,E.Fukushi and J.Mizutani: "2D ^<13>C-Coupled HMQC-ROESY:A Probe for NOE_S between Equivalent Protons" Journal of the American Chemical Society. 114. 1115-1117 (1992)
• [文献書誌] J.Kawabata,E.Fukushi,M.Hara and J.Mizutani: "Detection of Connectivity between Equivalent Carbons in a C_2 Molecule Using Isotopomeric Asymmetry:Identification of Hopeaphenol in Carex pumila" Magnetic Resorance in Chemistry. 30. 6-10 (1992)
• [文献書誌] T.Horio,Y.Kawabata,T.Takayama,S.Tahara,J.Kawabata,Y.Fukushi,H.Nishimura and J.Mizutani: "A Potent Atractant of Zoospores of Aphanomyces cochlioides Isolated from its Host,Spinacia oleracea" Experientia. 48. 410-414 (1992)