研究概要 |
1.わが国の主要針葉樹の葉緑体DNAのRFLP分析による系統分化の研究 スギ・ヒノキ・カラマツ・アカマツ・クロマツ・チョウセンゴヨウ・ストロ-ブマツ・キタゴヨウ・トウヒ・エゾマツの5属10種について、葉緑体DNAをPstI、SalIを用いて制限酵素分析をした。またマツ5種についてPstI,SalI、SacI、XhoIの4種の制限酵素を用いて分析した。 これらのRFLP分析デ-タをもとにして、系統樹作成プログラム:PHYLIPを用いて系統樹を作成した。その結果、マツ属は二葉松と五葉松の樹種群に分かれ、マツ科樹種で大きなクラスタ-を形成した。これらの系統樹構成の関係は従来の分類体系に合致していた。 2.スギの葉緑体DNAの物理地図の作成 スギはわが国の重要造林樹種であり、その遺伝に関する研究成果も多い。葉緑体・茎葉の形態・胚致死・アイソザイムなどに関与している主働遺伝子が多数検出されている。これらの研究と分子遺伝学との連携をめざし、スギ葉緑体DNAの物理地図の作成を試みた。4種の制限酵素(PstI、SalI、SacI、XhoI)を用いて物理地図の作成を行った。ゲノムサイズは約133kbpであった。用いたプロ-ブはスギSalIライブラリ-の9種のフラグメント,コムギとタバコの葉緑体DNAフラグメントそれぞれ8種と2種およびタバコの葉緑体DNAから単離した光合成関連のプロ-ブ17個、20種の遺伝子(psaA、psaB、psbA、psbC、D、psbE、F、atpA、atpB、E、atpH、atpI、petA、rpl2、rpl16、rpoB、rpoC、rbcL、16S、23S)である。その結果、タバコを起源的な葉緑体ゲノムと仮定すると、少くとも6回のイベント(1回の欠失および5回のインバ-ジョン)が生じてスギの葉緑体ゲノムに至っていることが推測される。
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