研究課題/領域番号 |
02454071
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
山本 福壽 鳥取大学, 農学部, 助教授 (60112322)
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研究分担者 |
玉井 重信 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (60026606)
橋詰 隼人 鳥取大学, 農学部, 教授 (60032075)
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キーワード | 酸性雨 / SO_4イオン / スギ枯れ / 合成酸性溶液 / 低分子炭化水素 / エチレン |
研究概要 |
(1)山陰地方における雨水及び渓流水のpHとイオン組成:鳥取大学蒜山演習林、三朝演習林において雨水及び渓流水の採集を行い、pH及び溶存イオンの組成を分析した。この結果、山陰地方でもpH4〜5が観測されるなど弱い酸性雨が降っており、SO_4イオンを確認した。(2)山陰地域における神社林のスギ先枯れ現象:海浜に近い神社林のスギの先枯れが目だっており、塩風の影響が予想された。(3)合成酸性溶液処理が樹木の生育に及ぼす影響:クロマツ、アカマツ、カラマツ、ハルニレのポット苗木を用いてH_2SO_4,HNO_3により合成した酸性溶液を5月12月から週2回2カ月間、苗木の葉面全体に散布した。この結果pH1.6区のカラマツ、ハルニレは散布後一日で葉の褐変が生じた。またアカマツの前年葉にも褐変が認められた。これらの葉の絶乾重量はpH1.6区で顕著な減少が認められたがクロマツではほとんど影響が現れなかった。またpH2.6以上の処理区では成長、バイオマスへの影響はほとんどなかった。さらにスギ、ヒノキの苗木を花崗岩風化土、砂丘砂、及び黒色土に植栽し、合成酸性溶液を7月16日から3カ月間土壌に灌注した。この結果、砂丘砂、花崗岩風化土に植栽された苗木はともにpH1.6区において2〜12週間で枯死した。しかしながら黒色土では成長が抑制されたものの枯死することはなかった。またpH2.6以上の処理では成長への影響はほとんど無かった。(4)合成酸性溶液処理による低分子炭化水素生成:スギ、ヒノキ、カラマツ、ケヤキにpHの異なる合成酸性溶液を吸収させ、生成される低分子炭化水素を調べた。この結果、いずれの樹種もpH1.6の溶液処理によりエチレン生成が促進された。しかしながらpH2.6以上の処理区では変化がなかった。 以上の結果、一般に観測される範囲内での酸性雨が樹木の生育に及ぼす影響は実験的には極めて小さいことが明らかになった。
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