研究概要 |
これまでの本研究の結果として,山崩れの発生に対する安定解析は,斜面の縦断面における2次元的な機構に加えて平面的な機構(3次元的機構)の存在が想定されるにいたった。本年度は,引き続き,3次元的な機構として崩体内にアーチ構造が形成され,崩壊の側壁面で低抗が発生していることを仮説とし,その構造の実在を裏付ける力学的な機構と,現地での実態把握,それが粘着力,摩擦力に対比して,どのくらいの大きさの低抗を果たしているかを検討した。 これまで,傾斜面どの土層内に生じる土圧は,連続体としての条件下で現れ,伝達されるものとして検討されてきているが,新たに,土層がアーチ形状のブロックに分割されて存在し,圧力もアーチに沿って側方に伝達されることが確かめられた。まず,模型斜面の崩壊実験で,土層内での圧力分布を検討した結果,崩壊発生時に中央から側方に向かう圧力が生じ,その力線がアーチ型の曲線形状をとることが,ほぼ明らかとなった。つぎに,アーチブロックの実在調査の結果,急激運動の山崩れでは把握しにくいが,動きが緩慢な地辷りや,氷河において,分割形状が,具体的なアーチ形状のブロックとして存在していることが確かめられた。あわせて,ガリー侵食によって,地辷りが発生しやすくなること,氷河のU字谷形成機構が説明された。 平成3年度の19号台風による森林の倒状被害は,根系の脱落,攪乱によって土層構造を劣化させ,2次的に土砂災害を引き起こすことが恐れられている。その場合の土層状態の変化と崩壊発生の実態をもとに,根系の効果,すなわちアーチ構造の効果を検討した。結果として,滑り面の単位面積当たりの単位体積の土層に対しては,粘着力とほぼ同値の側方低抗を生じさせていることが推定された。
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