研究概要 |
カレイ科3種(プレ-ス・ホシガレイ・ババガレイ),ヒラメ科1種(ヒラメ),ササウシノシタ科1種(ササウシノシタ)の計5種をふ化直後より変態完了まで飼育し,変態過程における甲状腺ホルモン及びコルチゾルの体組織中濃度の変化をRIA法により調べた。ヒラメについては,免疫組織化学的手法により脳下垂体中のプロラクチンと成長ホルモンの動態,及び組織学的に間腎組織と胸腺の変化を調べた。また,ササウシノシタでは,飼育水中に甲状腺ホルモン(T_4)とチオウレア(TU)を投与し,変態の誘導や抑制を調べた。得られた結果は以下のとおりである。 1.調べた全ての魚種で,変態中期あるいは後期にT_4濃度に顕著なサ-ジが観察された。 2.プレ-スでは,T_4サ-ジ(変態後期)に先行して,変態初期〜中期にコルチゾルのサ-ジが認められた。 3.極めて短期間に変態過程が完了するササウシノシタにおいても,T_4やTUによって変態の誘導と抑制が観察された。 4.脳下垂体中におけるプロラクチン産生細胞群の割合は,ヒラメでは変態初期まで上昇後,変態中期に低下した。一方,成長ホルモンの同様の値は,変態期を通じて一貫して上昇した。 5.ヒラメの変態過程の進行とともに,間腎細胞の核の大型化が観察され,組織学的にも間腎の機能亢進が確認された。一方,変態最終期には,胸腺体積の一時的縮小と組織の退行変化が認められた。 以上の結果より,甲状腺ホルモンは異体類の種々の分類群に共通して変態を支配するホルモンであること,また,その作用にはプロラクチンやコルチゾルが関連している可能性が推定された。今後,これらのホルモンが体構造の作り換えとどのように関連しているかを実験的に解明する必要がある。
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