研究概要 |
配偶子あるいは接合子の染色体を操作することによって,遺伝的に斉一化した実験動物,すなわち近交系を作出する技術の開発を目標に,ドジョウを実験材料として,紫外線照射精子で媒精した卵の第1卵割阻止型雌性発生二倍体の作出に主体をおき,媒精卵の水圧処理による染色体の倍数化条件の解明を行い,次の成果を得た。 1.好適処理水圧の検討 HCG投与によって人工排卵させた成熟卵に紫外線照射精子を媒精し、その卵に,既に手法の確立されている第二極体放出阻止による倍数化を指標として、300〜800Kg/cm^2,1〜6分間処理を試みた。その結果,700と800Kg区において,倍数化が成功したと思われる正常形態をした稚魚の出現率が最も高い(50〜60%)こと,また処理時間は1分区において正常稚魚の出現率が最も高いことが判明した。 2.処理時間の検討 上記知見を基礎とし,紫外線照射精子媒精卵を,媒精後20〜50分経過した時点で,800Kg,1分間処理を行ったところ,25〜35分区(第1卵割前期)に倍数化が成功したとみられる正常稚魚が出現し,30分区においても最も高かった。しかし,その最高区の出現率はわずか3.9%にしか過ぎず,前年度における低温並びに高温処理の場合と同様に,第1卵割処理による倍数化が極めて困難であることが示唆された。しかし、魚類では産卵数が多いので,次年度は多数の卵を対象として,第1卵割阻止型雌性発生二倍体の作出を行う。 卵の老化と倍数化率 排卵後母体内に滞留させた卵を経時的に放卵させて媒精及び倍数化を行ったところ,4〜5時間経過の卵では,倍数化率の著るしい低下の起ることが判明した。
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