研究課題の解明のため、平成2年度の米穀に続き、3年度では青果物の対象に、産地調査(北海道東川町、福岡県、宮崎県の野菜、愛媛県のみかん)と消費地調査(東京都、札幌市の中央卸売市場)を実施し、さらに農林水産省、全農などから資料収集をはかり、それらの入出デ-タの整理と分析を行った。これらの研究を通じて、以下の諸点が新たな知見として得られた。 (1)青果物においても、品質の規定要素は多様で、それらは産地、品種、栽培方法、等級、階級、包装、など主に外在的要素から成り立っている。しかし、近年の量販店(生協を含む)間の競争激化の中で、「有機低農薬」「完熟」など、内存的品質(安全性、食味)の差を前面に出したマ-ケティングと産地掌握が進展し、従来の卸売市場における外見的品質差を重視した価格形成との矛盾を強めている。(2)卸売市場においては、現在でも規格が、価格形成の最大の指標になっているが、この結果、産地では選別の過剰細分化と厳格化、外品の大量発生、過剰・華美包装、選別労働の不足と労働過重、連作障害と地力減退など、無視できない問題が蓄積されつつある。とくに、みかん産地では糖分向上のため、一部に「根域制限栽培」や「水切り」など自然生態系を無視した農業技術の導入がはかられ、生産力の後退につながっている。(3)生産力拡力と消費者の品質指向に答えた真の意味での品質向上対策は、現在の卸売市場・量販店流通を前提にしては限界がある。その点では、生産者と消費者が提携する産直の実践が注目されるが、そうした実態についていくつかの事例を調査し、その特徴点を整理できた。
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