本研究は農業集落排水で最も多く採用されている接触曝気法による処理施設を対象として、維持管理費の70〜80%を占める電気代の節減を図りながら、とくに窒素除去を中心とした安定した処理性能を得るための合理的な運転管理方法を明らかにしようとしたものである。 本年度は、滋賀県愛東町青山集落排水処理施設の敷地内に設置されている小型モデル実験装置を利用して、大型後生動物の発生状況とそれが処理性能に及ぼす影響について実験を継続した。また、滋賀県内で稼働している15施設での処理性能に関するデータを用いて数量化解析を行い、窒素除去に及ぼす諸因子を明らかにするとともに、安定した窒素除去を達成するための運転管理方法について検討した。得られた成果の概要は以下のとおりである。 1.小型モデル実験装置による実験では、(1)大型後生動物の大量発生によって生物膜量が減少し、硝化の進行が悪化すること、(2)大型後生動物は秋から冬にかけて大量発生するという季節的周期性がみられること、(3)流人負荷量が増えるほど大量発生しやすく、それが硝化にも影響すること、が確認された。 2.数量化解析の結果から、(1)曝気槽のDO濃度、(2)曝気槽のBOD負荷、(3)返送比、(4)ろ材の比表面積、(5)水温、が硝化の進行に大きく影響していることが確かめられた。 3.以上のことから、良好な窒素除去を達成するためには(1)大型後生動物の発生を抑制すること、(2)十分な曝気量を与えること、(3)嫌気槽の汚泥引き抜きを行うこと、(4)返送比はある程度高く維持すること、(5)適切なろ材を選定すること、等が重要であることが明らかとなった。
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