各種培養物理環境の下で、各種培養植物、外植片、培養組織の光合成特性(特にクロロフィル螢光反応と光ーCO_2ー純光合成曲線)、蒸散特性を経時的に測定した。培養植物の諸特性の測定は、葉位別、部位別に行い、培養器内の光量子束、温度、湿度、2酸化炭素濃度、酸素濃度、空気流速、培地水ポテンシャルなどの物理環境を変化させ、また培地糖濃度などの培地化学条件も変化させて、培養植物の光合成特性、蒸散特性ならびに生長速度を経時的に測定した。さらに、これら諸特性を、屋外ならびに温室内で生長させた通常の植物のそれらに関する文献値と比較検討した。また、培養植物の生長に伴う培地組成、培地物理環境の変化も同時に測定した。培養器内の物理環境を測定、制御するための、特殊な小型センサの試作、開発もあわせて行った。その結果、培養器内物理環境は培養植物の生長・発育におよぼす影響が顕著であることが認められた。さらに植物生態学ならびに環境調節工学的立場から、効率的環境調節に応用するより具体的方法を検討し、新しい原理にもとづく種苗急速大量システム、培養器内育種システムの開発の基礎的知見を得ることが今後の課題として残された。以上の成果は、原著論文、総説および解説として数種の学会誌などに投稿し、そのうちの数編は印刷中である。培養器内植物の環境生理学的解明は興味あるテ-マであることが明らかになりつつある。
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