研究概要 |
本年度の研究成果を概要すると次の通りである。 まず,植物の水プロセスにおいて重要な環境指標である蒸散要求度を環境要素(放射,気温,湿度,気流特性など)だけから評価する方法を確立した。放射,気温,風速の種々の条件下でろ紙模擬葉及びキュウリ葉の蒸散速度を計測した結果,蒸散速度が熱収支式から得られた蒸発・蒸散要求度と線形関係にあることを認めた。 つぎに,制御環境における根の機能に関する研究の一環として,根系の通水抵抗に対する根の温度の影響について調べた。植物の地上部を切除した根系の基部をシリコンゴムでガラス管に固定し,密閉したポット内に根系を入れ,ガラス管から一定の負圧で吸引した。種々の温度条件下で根の水吸収速度,培養液の溶存O_2濃度,溶存CO_2濃度及びPHのオンライン計測を行った。解析結果から,全通水抵抗は根温が低いほど大であること,蒸散速度に対する地温効果の「種」特異性が根の全通水抵抗の温度特性に起因することが明らかになった。 さらに,根の生長解析を行うため画像処理を用いた根長計測法を新たに開発した。これは,スチルビデオカメラで得た画像デ-タを2値化及び細線化処理を行った後,細線部の画素をカウントすることによって根長を求める方法であり,測定精度が高く,操作的に簡便なものである。この方法でキュウリ根の生長計測を行った結果,根長は乾物重,葉面積と共に指数的に増大していくことがわかった。 以上のように,本年度は環境に対する植物反応の計測と解析のための新しい方法を確立し,これによって環境と植物に関する重要な知見を得ることができた。
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