研究概要 |
DNAフィンガ-プリント法は、かなり相同性の低いミニサテライト領域まで検出するため、ハイブリダイゼ-ション後の洗浄はかなり甘い条件で行う。そのため条件はかなり厳密に設定しないと再現性に問題が残る。そこで今年度、ウシを用いる場合の最敵条件の設定を試みた。ウシのほか、同時にブタ、ウサギ、ラット、マウス、ニワトリ、ホロホロ鳥で条件設定を行ったところ、哺乳類と鳥類でstringencyに大きな差が見られた。同条件で、哺乳類と比較して鳥類ではより強いシグナルが観察されたが、哺乳類の中では差はなかった。洗浄の温度、塩濃度を変えて調べたところ、哺乳類における洗浄の最適条件は4×SSC,0.1%SDS,55℃で30分間2回、2×SSC,0.1%SDS,55℃で30分間1回洗浄であった。 3品種のウシ(黒毛和種、褐毛和種、ホルスタイン種)を5頭ずつ用いたフィンガ-プリントでは、どの個体も非常に多数の多型性に富んだバンドが観察され、品種間、品種内に関係なく個体に特有のバンドパタ-ンを示していた。これらの結果から、本法を用いることによって一度の分析で個体識別が可能だと言える。 次に、4家系からなる黒毛和種に対して親子鑑別を行った。どの家系においても子供のバンドは両親のどちらかから受け継いでおり、親子関係に矛盾はなかった。本研究で用いた両親間の血縁は高く、血縁係数は家系1で36.7%であり、以下家系2(43.3%)、家系3(28.2%)、家系4(49.2%)であった。しかし、血縁の最も高かった家系4では雄親のみから受け継いでいるバンドはなく、両親と子供の3個体間に共通のバンドは55.6%と高くなっていた。これらのことから両親間の血縁が高い場合、判別不能のケ-スが生ずる可能性があると思われた。この様な場合の解決策を考慮する必要があろう。
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