研究概要 |
兵庫県産の黒毛和種「但馬牛」は、その肉質が極めて優れており、わが国の黒毛和種の改良に多大の影響をもたらしているが、その繁殖雌牛集団はわずか2,000頭にすぎない。われわれは本研究課題においてこの繁殖雌牛集団の有効な活用を計るためDNAフィンガープリント(DFP)法と制限酵素切断断片長多型(RFLP)分析によるDNA多型分析を利用した親子鑑別や集団の遺伝的構成など遺伝・育種学的検討を加えた。結果の概要は次のとおりである。1).プローブにM13ファージの反復配列を用してDFPを親子関係の明らかな繁殖雌牛集団の42組に適用したところ、制限酵素としてHae IIIをはじめ、二、三の酵素を用いればどの組でも親子鑑別が可能であった。2).DFPのバンド(ミニサテライト遺伝子)の類似性(X)と血縁係数(Y)の関係をGenetic Similarity法で求めたところ、Y=1.149X-0.026という有意な回帰関係が認められ、バンドの類似性から血縁係数が予側できることが示された。3).DFPのバンディングパターンでクラスター分析を行ったところ、兵庫県美方郡の繁殖雌牛集団は2つの大きなクラスターに分けられた。その原因を調べた結果、評価した20のミニサテライト遺伝子座のうち遺伝子座16と19の頻度により2つのクラスターに分けられることがわかった。4).リポプロテイン・リパーゼ(LPL)のcDNAをプローブとしてウシのRFLP分析を行った。その結果、LPLのcDNAのアミノ酸をコードしている5'の部分をプローブにするとHind III、Pst Iなど5種類の制限酵素を用した場合に多型が観察された。兵庫県の閉鎖繁殖雌牛集団ではこれらのRFLPはハプロタイプ様のクラスターを形成して、個体はAA型,BB型のいずれかに分類された。この多型は単純なメンデル遺伝をし、同集団116頭ではA型のクラスターの遺伝子頻度は0.418、B型のそれは0.582であった。
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