研究概要 |
トランスジェニック鶏作出のためには,遺伝物質を卵子に注入したのち,雛を産出する技術を確立する必要がある。しかし,Perry(1988)の体外培養法では確立が低いので,本研究では新しい方法を試みた。 1.供試鶏には白色レグホン系コマーシャル種,雄鶏は産子の羽装が雄方を示すロードアイランド種を用いた。卵子は,推定排卵時刻の約30分後と殺,開腹して腹腔または3斗部から採取したのち抗生物質を入れたリンゲル液に入れ静置した。精子は4羽の雄から採取,混合したのち,リン酸緩衝液で2倍に希釈し,卵子への媒精直前にリンゲル液で100倍に希釈した。この希釈精液0.1〜0.01mlを卵子の胚盤上に注ぎ,15分後その卵子をあらかじめ開腹した別の鶏の卵管内に挿入した。この鶏は,排卵直前のものを用い,最初授精卵をろ斗に入れ.両手で卵白分泌部の入口まで入るよう押込めた。この様にすると卵子の殆んでは子宮に到達し翌日硬殻卵を産出する。産卵した卵は,市販のふ卵器に入れ,通常の方法でふ卵を行なった。 2.その結果,胚盤上に希釈精液0.01ml注いだグループでは,受精率が55%(6/11),0.1mlのものでは65%(13/20)であったが,いずれの場合もふ卵途中で胚は死亡した。しかし,0.05mlを注入したグループでは受精率は55%(12/22)であったが,受精卵12個のうち6個がふ化し健康な雛を得ることが出来た。それらの雛の羽装はロードアイランドレッド種の雛と同一であった。 以上本研究による方法は,ふ化効率が良く,トランスジェニック鶏作出のために有効な手法であると考えている。今後は,受精卵に遺伝物質を挿入することを試みる計画である。
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