研究概要 |
本研究は,トランスジェニック鶏作出を最終目的として行なったものである。 1.未受精卵は、推定放卵時刻の約30分後と殺、開腹して腹腔またはろ斗部から採取した。精子は4羽の雄より採取混合し、リンゲル液で1000倍に希釈したのち、一部は76℃で凍結融解(運動性0)した。これら精子または赤血球核は、マイクロシリンジに入れ胚盤内に1〜6個入るよう注入し41℃で12時間培養した。培養後ホルマリンで固定、染色して卵割の有無を観察した。その結果、凍結融解精子を顕微注入した63個の卵子のうち14個(22%)が正常卵割を起し、14個は異常卵割であった。一方、赤血球核を注入した21個のうち5個が正常に発達していた。これらの結果から、精子の生死にかかわらず、また赤血球核でも卵子に注入す ることによって卵割が誘起されることを認めた。 2.トランスジェニック鶏作出のためには、遺伝物質を卵子に注入後雛の産出への技術を確立する必要がある。しかしPerry(1988)の体外培法は確率が低いので、本研究では新しい方法を試みた。供試鶏は白色レグホン種、雄鶏は産子の羽装が雄方を示すロードアイランドレッド種を用した。卵子は前述の方法で採取し、抗生物質を入れたリンゲル液に入れ静置した。精子は4羽の雄から採取混合したのちリン酸緩衝液で2倍に希釈し、卵子への媒精直前にリンゲル液で100倍に希釈した。この希釈精液0.1〜0.01mlを卵子胚盤上に注ぎ、15分後その卵子を放卵直後の卵管内に挿入した。翌日放卵した硬殻卵をふ卵器に入れた。その結果、25個のうち16個が受精卵であったが、0.1mlのグループのみに6羽のひな(38%)がふ化した。これらの結果から、本研究による方法は、効率がよくトランスジェニック鶏作出のために有効な手法であると思う。
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