高蛋白質飼料給与がめん羊カルシウム(Ca)および骨代謝に与える影響を調べるために、2つの試験を行った。第1試験では4頭の、第2試験では6頭の去勢めん羊を用いて試験を行った。同一エルネギ-摂取条件下では高蛋白質飼料摂取により見かけのCa吸収は促進され、体内Ca保有量は統計的に有意に増加した。一方、尿中Ca排泄量も高蛋白質飼料摂取により増加したが、これは腎臓における系球体ろ過Ca量が増加し、尿細管以降でのCa再吸収量に変化がなかったことによるものと考えられた。また高蛋白質飼料を給与すると、血漿中Ca濃度はわずかではあるが低下し、骨吸収の指標と考えられる血漿中遊離ハイドロキシプリン濃度ならびに血漿中副甲状腺ホルモン濃度は上昇した。したがって全体的に言えば高蛋白質飼料給与はめん羊のCaおよび骨代謝を活発にしていると考えられた。めん羊を用いてEDTA負荷試験を行ったが、EDTA注入時の骨からのCa動員量は高蛋白質飼料給与区の方が対照区よりも多く、この試験結果も高蛋白質飼料給与はめん羊の骨代謝を活性化することを示唆していた。 ラットの筋肉内に脱灰骨基質を埋没して、埋没物が骨化していく様相を観察する方法を用いて、高蛋白質飼料給与が骨形成に与える影響について検討した。対照食区では移植14日後では骨基質を分泌している骨芽細胞、骨細胞と多核の破骨細胞の存在が観察されたが、高蛋白質食区では骨芽細胞、破骨細胞はほとんど見られず、軟骨細胞が優勢な状態であった。これは高蛋白質飼料摂取によってラットの骨化が遅延あるいは抑制されたか、または軟骨の増殖が促進された結果によると推察されるが、その詳細については今後の検討が必要である。
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