研究概要 |
第4胃にカテ-テルを装着した4頭のめん羊用い,第4胃へのカゼイン投与が窒素(N)出納,血液中カルシウム(Ca)濃度,骨代謝指標に与える影響について調べた。対照区に比べて,カゼイン投与区では,Nの採取量は2倍近くに増加し,Nの体内保有量,血漿中の尿素態N濃度はそれぞれ約3倍に増加した。血液中のCa濃度はカゼイン投与により低下の傾向があり,尿中ハイドロオキブロリン排泄量は増加の傾向が見られたことから,骨吸収は盛んになっていることが示唆された。上記の試験と同時に,6ケ月間もの長期間にわたり,高蛋白質飼料でラットを飼育してミネラル出納と骨中ミネラル含量を調べた試験では,Ca吸収はすべての時期において高蛋白質飼料投与により増加するが,骨中のCa含量は飼育末期では低下することが認められた。したがって,カゼインを多く含む高蛋白質飼料の投与はCaのみかけの吸収を増加さすが,尿中Ca排泄量も増加させ,血液中のCa濃度の低下を引き起こすと考えられた。さらに血液中のCa濃度の低下は骨吸収の増加を導き,若い動物では骨代謝の活性化を引き起こすが老齢の動物では骨中Ca含量の減少を導くと思われた。 一方,カゼインの部分分解物であるカゼインプロフォスフェイト(CPP)投与が骨代謝に及ぼす影響を脱灰骨基質(DBM)埋没法を用いて調べた。飼料中0.5%のCPP投与は血液中Ca濃度を有意に上昇させ,Ca含量を有意に増加させた。また,DBM中のAlpーaseに変化は見られなかったがAcpーaseは有意に減少していた。したがって,CPPは骨吸収を減少させ,骨中のCa濃度を上昇させる働きがあると考えられた。めん羊に微細に粉砕しためん羊骨を埋没して骨吸収を調べる方法(非脱灰骨埋没法)を用いて蛋白質欠乏が骨吸収に与える影響について調べた試験では低蛋白質飼料給与は破骨細胞の増殖を抑え,骨吸収の低下を導くことを見出している。
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