本研究は高蛋白質飼料給与ならびに小腸上部に直接到達させたアミノ酸がカルシウム、骨代謝、骨成長にどのような影響を与えるかについて調べたものである。めん羊に高蛋白質飼料を給与すると、見かけのカルシウム吸収は促進され、体内カルシウム保有量は有意に増加した。尿中カルシウム排泄量も高蛋白質飼料摂取により増加したが、これは腎臓における糸球体ろ過量が増加し、尿細管以降でのカルシウム再吸収量に変化がなかったことによるものと考えられた。また高蛋白質飼料給与により、血漿中カルシウム濃度はわずかながら低下し、骨吸収の指標とされている血漿中遊離ハイドロキシプロリンならびに血漿中副甲状腺ホルモン濃度は上昇した。したがって、全体的に言えば高蛋白質飼料給与はカルシウムおよび骨代謝を活発にしていると考えられた。 めん羊に対するEDTA注入時の骨からのカルシウム動員量は高蛋白質飼料給与により増加したが、この試験結果も高蛋白質飼料摂取は骨代謝を活性化することが示唆された。 めん羊の第四胃へのカゼイン注入によって、血漿中ソマトメジンC濃度は増加する傾向にあり、血漿中インスリン濃度は明らかに増加した。しかし、骨形成の指標であるオステオカルシン濃度には変化が認められず、第四胃以降への良質な蛋白質の流入は骨成長の促進に働くことが推察されたが、動物の成長段階によって反応に違いのあることも示唆された。また第四胃へのアラニンとアスパラギン酸注入は血漿中インスリン濃度を上昇させたが、ソマトメジンC濃度を減少させた。したがって十二指腸に到達するアミノ酸の種類、量により、骨代謝・成長に関連するホルモンの反応に違いが生じる可能性のあることが考えられた。
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