研究概要 |
精細管のin vitro培養系の確立は、性分化の機構を調べる上でも、また精子発生の機構を解析する上でも欠くことの出来ない研究課題である。本研究において我々は、以下の3群の研究を遂行し、8編の学術論文にまとめた。第一は、未分化の生殖腺を用いてin vitro培養条件において、精巣索が分化する条件を決定した。ついで、未分化の生殖腺が精巣索へと分化する際に、精細胞やセルトリ細胞の形質膜にフォルスマン抗原やGM1ガングリオシドなどの糖脂質や、種々の糖タンパク質がステ-ジ特異的に発現することを示した(Jpn.J.Zootech.Scoi.,1990;Histochemistry,1990)。また精巣索形成におけるこれらの複合糖質の役割を明らかにするために、in vitro培養下の未分化の生殖腺に、Nーグリコシド型糖鎖の合成阻害剤であるツニカマイシンを添加した結果、精巣実質内への間葉系細胞の侵入が有意に阻害され、不規則な索様構造を示した。これらの結果は、精細管形成に複合糖質が深く関与していることを示すものである(Anat.Rec.,1991)。第二は、精子発生に不可欠な要因を明らかにするために、間質の形態学的特徴を精査した(Exp.Anim.,1990)。また血液・精巣関門をディ-プエッチ法を用いて観察し、精子発生の制御および免疫学的に異なる基底側と管腔側の分離の機構を、細胞内骨格系の存在様式を通して、初めて明かにした(Tissue and cell,1991)。さらに精細胞に対するステ-ジ特異的な単クロ-ン抗体を作製し、パキテン精母細胞から初期の精子細胞にかけて103KDaのタンパクが核膜およびERに出現することを示した(J.Vet.Med.Sci.,1991)。第三に、低温度および高い性ホルモン濃度が精子発生に必要であるが、それを保障する精索の動静脈の構築について、3種の動物を用いて比較検討した。その結果、対向流を行う機構に、共通の様式と種特異的な様式の2者の存在が示された(J.Vet.Med.Sci.,1990;J.Anat.,1991)。
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