研究課題/領域番号 |
02454099
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 迪雄 東京大学, 農学部, 教授 (30011943)
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研究分担者 |
松山 茂実 東京大学, 農学部, 助手 (80219526)
村上 昇 宮崎大学, 農学部, 助手 (80150192)
塩田 邦郎 東京大学, 農学部, 助教授 (80196352)
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キーワード | 本能行動 / 走行行動 / 視床下部腹内側核 / 吸水ポリマ- / γーアミノ酪酸 / カイニン酸 / 糖代謝 / 概日リズム |
研究概要 |
我々は、視床下部腹内側核(VMH)の神経細胞の興奮により攻撃、逃避などの動機を伴わない、定型的な走行行動が発現することを見いだした。このような走行行動は摂食、繁殖など多くの本能行動に不可避的に随伴する″行動の素要素″であると考えられる。本研究においては、この走行行動を誘起する神経機序について解析するとともに、この定型運動には、定型的な代謝調節の変化が付随しているのではないかとの仮説をたて、検討を行なった。 まず第一に、VMHに吸水ポリマ-を注入することによりGABA性抑制が解除され、同神経核から持続的な神経出力が誘起され、走行行動が発現することが判明した。また、この走行行動発現に関与するVMHニュ-ロンの興奮性はグルタミン酸作動性ニュ-ロンによりそのカイニン酸型受容体を通して高められること、GABA作動性ニュ-ロンはシナプス前抑制によりグルタミン酸の放出を抑えることが示唆された。次に、VMHへのカイニン酸投与による走行行動の発現に伴って、血中コルチコステロン、カテコラミン、およびグルコ-スのレベルが大きく上昇することが明らかとなり、VMHには行動発現に伴って、これと合目的的に共役する代謝変化をもたらすような、カイニン酸により賦活される神経機構の存在することが示唆された。さらに、VMHからの出力は乳頭体、中脳中心灰白質などを経由して走行行動を誘起すること、VMHから視交叉上核に直接投射する出力が概日リズム発振機構に影響を与えていることなどが神経切断実験、連続行動記録実験などから示唆された。 以上のように、本研究によって、VMHには興奮性および抑制性アミノ酸の相互作用によって走行行動を発現する神経機構が存在すること、またこのVMHからの出力は視床下部が担う他の代謝調節などの機能にも影響を与え、走行行動発現と内部環境のホメオスタシス維持とがVMHにおいて密接に共役していることが明らかとなった。
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