平滑筋の収縮は、細胞内Ca濃度の増加に基づくミオシン軽鎖のリン酸化によって制御されていると考えられてきたが、近年、生化学的研究により、ミオシン側ではなくアクチン側の制御機構が存在する可能性が指摘されている。しかし、生理的条件下でこの様な機構が機能しているかどうかの検討はほとんどなされていない。本研究では血管および気管平滑筋において、生筋におけるfuraー2を用いた細胞内Ca動態、ミオシンのリン酸化、およびスキンドファイバ-における収縮反応を解析する事により、以下の点を明らかにした。 I.血管平滑筋および気管平滑筋の収縮機構には、 1)細胞内Ca濃度の増加に依存したミオシン軽鎖のリン酸化による制御機構 2)ミオシン軽鎖のリン酸化のCaに対する感受性を増加させる機構 3)Caに依存するミオシン軽鎖のリン酸化に依存しない収縮機構 の3つが存在する。 II.上記のミオシン軽鎖のリン酸化に依存しない収縮(3)はアクチンとミオシンの相互作用による。 III.上記のミオシン軽鎖のリン酸化のCaに対する感受性を増加させる機構には、ミオシン側からの制御機構ではなく、何等かのアクチン側からの制御機構による可能性が考えらた。それらの作用が、Cキナ-ゼを活性化するホルボ-ルエステルによっても認められることから、その機構にCキナ-ゼが関与する可能性が考えられたが、その詳細はさらに検討を要する。
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