研究概要 |
平成2年度に継続して、牛のFusobacterium necrophorum感染症の血清学的診断法(ELISA法)について種々の検討を行った。即ち、と場で採取した肝膿瘍以外の病変を有する内臓病変保有牛について細菌学的及び血清学的検討を実施したところ、以下の成績を得た。 1.肝膿瘍以外の牛内臓病巣52例を細菌学的に検索したところ、34例からF.necrophorumが多数もしくは優勢に検出された。菌数的には10^3ー10^8コ/mlを示した。なお、随伴菌として好気性菌及び通性菌が分離された。 2.これら動物の血清について昨年度に検討した術式にしたがってELISA法を実施したところ、高いELISA抗体価を示す例が多く認められた。なお、抗体価の低い例も若干認められた。 3.F.necrophorumの出現菌数とELISA抗体価の関数を検討したところ、菌数が10^4以上の場合、高いELISA抗体価を示す例が多く認められた。 4.病巣中のF.necrophorumの菌数を計測できなかった牛においても比較的高いELISA価を示す例が若干認められた。 5.病巣からF.necrophorumが検出されず、Actinomyces pyogenes,Staphylococcusaureus,Pasteurella sp,Escherichia coliおよびGram陰性桿菌が分離された牛においてはELISA抗体価は概して低く、0.2以下を示す例がほとんどであった。 これらの所見から、F.necrophorumによる肝膿瘍以外の部位の内臓病巣保有牛の生前診断法として、本ELISA法は野外における応用可能な血清診断法と考えられた。 このような結果を基にして、今後は野外に於て育成中及び市場出荷前の牛血清についてELISA価の推移を検討すると共に、抗体グロブリンレベルの解析を行なう予定である。
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