研究課題/領域番号 |
02454103
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
基礎獣医学
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
鹿江 雅光 山口大学, 農学部, 教授 (00035099)
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研究分担者 |
井上 誠 山口大学, 農学部, 助手 (80035112)
甲斐 一成 山口大学, 農学部, 助教授 (60085628)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1992
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キーワード | 壊死桿菌症 / 嫌気性菌 / 血清学的診断法 / ELISA法 / 肝膿瘍 / 生前診断法 / 日和見感染症 |
研究概要 |
Fusobacterium necrophorumは嫌気性菌感染症の一つで、人および各種動物に感染し、壊死性ならびに膿瘍性の病変を惹起させる疾病である。本症の診断に応用できる感度ならびに特異性の高い血清学的診断法を明かにする目的で、Enzyme-linked-immunosorbent assay(ELISA)についての基礎的な検討を3年間にわたって試みたところ、以下のような結果を得た。 1.ELISA用抗原として、F.necrophorumの白血球毒、赤血球凝集素及び塩酸抽出抗原の比較検討を実施したところ、塩酸抽出抗原が感度および特異性に関してまさっていた。 2.本菌種の各菌株および類縁菌ならびに牛肝膿瘍から頻繁に検出される数種の菌属について、本反応における交差反応性の有無を検討した。その結果、F.necrophorumに属する4株はいずれも顕著な共通抗原性を示した。類縁菌のFusobacterium variumは弱い交差反応性を示した。一方、Escherichia coliおよびActinomyces bovisはいずれも本反応性を殆ど示さなかった。以上の所見から、本抗原液によるELISA法は特異性の高い反応であることが明かとなった。 3.実験感染家兎では、ELISA抗体は菌接種後早い時期から血清中に認められた。3週後には高値に達し、これは12週まで持続した。このことから本法による早期診断が可能と思われた。 4.F.necrophorum感染のみられた牛血清について本法により検討したところ、感染牛は高いELISA価を示したが、非感染牛のそれは低価であった。F.necrophorumの出現菌数とELISA抗体価の関係を検討したところ、菌数が10^4以上の場合、高いELISA抗体価を示す例が多く認められた。病巣中の本菌を計測できなかった牛においても、比較的高いELISA価を示す例が若干認められた。 5.育成中および市場出荷前の牛血清についてELISA法による抗体グロブリンレベルでの解析を行なったところ、イムノグロブリンG価が有意に高い価を示した。一方、イムノグロブリンM価には著しい変動は認められなかった。 6.塩酸抽出抗原の部分精製について検討を試みたところ、CMセルロースクロマトグラフィーにより本抗原が部分精製され、反応に関与する主な抗原の分子量は16kDと思われた。 これらの所見から、本ELISA法は野外におけるF.necrophorum感染症の生前診断法として感度および特異性の高い有用な方法と考えられ、本法の適用は本菌感染症による被害の減少に貢献すると思われた。
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