研究概要 |
モルモットの腸縦走筋にモノヨ-ド酢酸(iodoacetic acid;IAA:3ーホスホグリセルアルデヒドゲナ-ゼ阻害薬)を作用させると無反応期を経て収縮の発生があった。この収縮反応を起こすIAAの閾値濃度は0.1mMであった。1mM IAAを腸縦走筋に作用させると,約15分の1agの後組織ATP含量の減少とともに張力の発生があり,40mM K^+による張力の約27%を示した。その後張力はゆっくりと下降しこの張力発生の60ー65分で元のレベルまで下降した。IAA濃度を高くすると(0.1ー10mM),ATP含量の減少と張力発生の開始の時間が早くなり最大張力も大きくなったが,その張力発生期間は短くなった。このIAAの腸縦走筋に対する収縮反応は非可逆的であった。0.1mMDNP,N_2ガス等の代謝阻害条件は,1mM IAAによる収縮の開始を早めた。Ca拮抗剤のDー600(10^<-6>M)存在下で,1mM IAAによる最大張力は影響を受けなかったが収縮の開始は遅延した。fura2を使用し本科学研究費で購入した<細胞内カルシウム測定装置>___ーにより,IAA収縮開始時にのみに細胞内カルシウム濃度の増加が認められた。しかし,これは微量な変化であるので引き続き検索を加えたい。一方,回腸縦走筋にジニトロフルオロベンゼン(dinitrofluorobenzene;DFB:クレアチンホスホキナ-ゼ阻害薬)を作用させると数秒以内に張力の発生があった。Ca拮抗剤Dー600(10^<-6>M)は,1及び0.5mM DFBによる最初の小さな収縮,および0.35及び0.1mM DFBによる最初のphasic様収縮のみを抑制した。Dー600に抵抗する各濃度のDFBによる後半の収縮の発生は,組織ATP含量の減少とよく対応した。以上要約すると,IAAによる腸縦走筋のrigor発生の開始時にCa^<2+>が関与する可能性がある。またDFBによる収縮は,Ca^<2+>流入に依存した最初の収縮とその後のCa拮抗剤にあまり影響されず,組織ATP含量の低下を伴うrigorとに分けられると考えられる。
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