研究概要 |
モルモットの腸縦走筋に1mMのモノヨ-ド酢酸(monoiodoacetic acid;IAA)を作用させると,約15分のlagの後,正常値の組織ATP含量の約40%が減少した時点で張力発生があった。この張力発生の15分後に40mM K^+による張力の約27%の最大張力を示した。この時点の組織ATP含量は正常値の約25%であった。この後張力は次第に下降し,IAAによる張力発生の90分後には元のレベルまで下降した。この間のATP含量の低下は非常にゆるやかになった。1mM IAAによる張力発生が消失してから30分間正常栄養液で筋を洗浄したが,低下したATP含量の回復はなかった。この時点で再びIAAを作用させたが張力の発生はなかった。これはIAAが3ーホスホグリセルアルデヒドゲナ-ゼを非可逆的に抑制したためと考えられる。一方,腸縦走筋サポニン処理したスキンド標本において,3mM MgーATP,10^<-4.5>M Ca^<2+>による張力発生の約15分後,外液からのATP除去(10^<-9>M Ca^<2+>下)によるいわゆるhigh rigor stateにおいて,cagedATPを投与後光刺激をすると,cagedATPからATPが遊離され張力は下降した.この操作を繰り返すと,直前のhigh rigor stateの約90%の張力が再現された。このことから平滑筋のリガ-(rigor)を生む収縮蛋白のrigor linkageの形成は可逆性と考えられる。 また,fura2を使用し本科学研究費で購入した細胞内カルシウム測定装置により,IAAによる収縮開始時に細胞内のCa^<2+>濃度の上昇が認められたが,これは通常の収縮を引き起こすCa^<2+>濃度以下の変化であった。このことはCa^<2+>が収縮蛋白においてrigor linkageを形成する際にトリガ-(trigger)として働いていることを示唆していると考えられるが,非常に小さいCa^<2+>量の変化なのでさらに検討を加えたい。
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