研究概要 |
1mMモノヨード酢酸(IAA)を腸縦走筋に作用させると約15分の1agの後組織ATP含量の減少とともに張力の発生があった。電位依存性のCa^<2+>チャンネルを抑制するD-600(gallopamil)はIAA添加後のrigor発生の開始の時間を延長させたが、平滑筋細胞内のCa^<2+>ストアからのCa^<2+>遊離を阻害するリアノジン(ryanodine)はこれに影響しなかった。このことはIAAによるrigor発生には細胞外のCa^<2+>が関与することが考えられた。 一方、重金属イオンのMn^<2+>はCa^<2+>スパイクを特異的に抑制することにより各種平滑筋の収縮を抑制することが知られているが、Mn^<2+>は鶏砂嚢のスキンド標本において、ミオシン蛋白を直接酸化することによりCa^<2+>欠如下でミオシンの燐酸化を伴なわないでアクトミオシンATPaseを活性化させることによりrigor様収縮を起こすことが、Hoar & Kerrick(1988)により示された。そこで、Mn^<2+>の腸縦走筋におよぼす作用を検討した。Mn^<2+>(5mM)は60mMK^+によるtonic収縮をベースラインまで下降させたが約15分後張力がゆっくり出始めMn^<2+>添加後3時間後にはK^+によるtonic収縮高の約180%に達したが、La法による細胞Ca量は対照に比し増加しなかった。また、テトロドトキシンはこの張力発生に影響しなかった。正常栄養液に5mMMn^<2+>だけを加えた時は張力の発生はなかった。Mn^<2+>はCa^<2+>‐free下(十60mMK^+)でも張力を発生させた。D‐600は60mMK^+液中でのMn^<2+>よる張力発生とMn取り込み(Ca^<2+>,Mg^<2+>除去、EDTA添加液で洗浄)を抑制した。このことは、Mn^<2+>は電位依存性Ca^<2+>チャンネルを介して腸細胞内に取り込まれ収縮蛋白を活性化させると考えられるが、Mn^<2+>による腸平滑筋の収縮がrigorであるかどうかさらに研究が必要である。
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