研究概要 |
ビオチン標識したアクチンを培養ニワトリ心筋細胞に微量注入し,一定時間後にコロイド金を用いた免疫電顕法により標識したアクチンを可視化し,筋原線維形成過程におけるアクチンの動態をとらえた。(1)ビオチン化アクチンは,注入2分以後筋原線維の末端部に取り込まれた。これはこの部位で活発な代謝と再構築が起こっていることを示唆している像と考えられた。(2)14分以後,筋原線維末端の延長線上にアクチンが配列しているのがみえた。すなわちこの部位の筋細胞膜内面にはアクチンのモノマ-を集合させる機構があり,ここでモノマ-が重合して筋原線維が伸長すると考えられた。(3)筋原線維の近位部では,注入4〜5分以後にA帯に沿った筋原線維の周辺部分に標識されたアクチンの取り込みがみえ,ミオシンフィラメントの存在下にアクチンの重合が起こっていることが考えられた。また標識された遊離アクチンフィラメントが筋原線維に接近している像がみえた。これらは筋原線維の直径の増加に関与している像と思われた。(4)筋原線維の芯には,注入1時間以後にも取り込みがなく,これはこの部位における遅い代謝回転を示唆しているものと考えられた。 ニワトリの心筋と骨格筋における収縮調節蛋白質トロポニンCの遺伝子発現について,蛍光抗体,Northern blot,S1 nuclease protection assay法により調べた。胚においては心筋も骨格筋も,心筋型と骨格筋型のmRNAおよび蛋白質を発現していた。成熟すると,心筋は心筋型のみのmRNAと蛋白質を発現していたが,骨格筋では骨格筋型のmRNAと蛋白質を発現するほか,心筋型のmRNAを発現していた。すなわち,胚および成体においては通常,遺伝子発現は転写レベルでの調節を受けているが,親の骨格筋における心筋型(胚子型)トロポニンCの遺伝子発現は転写後の調節を受けていることが明かとなった。
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