研究概要 |
1.免疫組織化学:ラット胃体部粘膜に分布する神経を種々の組織化学的手法により検索し,ペプチドニュ-ロンとしてはGRP含有神経が最も多く,ついでVIP/PHI,CGRP含有神経が多いことが判明した。少なくともGRPとVIP/PHI神経は同時にアセチルコリンも含んでいた。この領域にはアドレナリン作動性神経はほとんど存在せず,GRP含有コリン作動性神経を主とする特異な神経支配が存在することがわかった。 2.胃潰瘍との関係:ラットに水浸拘束などによりストレスを負荷すると,潰瘍(胃粘膜病変)が生じる。ストレス負荷後の変化と経時的に観察すると,GRP免疫活性神経の減少と病変の程度が相関することがわかった。このGRP神経の減少は神経の変性を意味するのではなく,神経末端からのGRPの大量放出による伝達物質の一時的な枯渇の結果である。 3.電子顕微鏡レベルの観察:GRP神経をはじめとする胃体部粘膜の神経は毛細血管にからまるように走行しており,両者の密接な位置関係が明らかにされた。これらの毛細血管には収縮能をもつとされる周皮細胞が付随しており,神経がこの細胞に作用し胃粘膜の虚血状態,ひいては胃粘膜病変をひきおこしている可能性が示唆された。 4.アミノ産生細胞:胃粘膜病変や胃酸分泌と関係の深い肥満細胞ならびに内分泌細胞(EC,ECL細胞)を免疫組織化学的に検索した。げっ歯類の肥満細胞はヒスタミンとともにセロトニンを含むが,セロトニン合成酵素はEC細胞や腹水の肥満細胞には存在するものの胃粘膜内肥満細胞には含まれていないことがわかった。肥満細胞の起源,動態に関連して興味深い所見である。
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