研究概要 |
(1)漿膜側Cl^-チャネルについて。全細胞パッチクランプ法を使って,Cl^-電流を捕えた。このCl^-チャネルについてはこれまで知られていないものであった。哺乳動物の胃酸分泌細胞の細胞膜電位を獲得するのに非常に重要なチャネルであることがわかった。このチャネルは,Cl^-チャネル阻害剤であるNPPB阻害された。単一チャネル電流は非常に小さく,ノイズアナリスより単一電流は,約0.35pSであることが判明した。細胞内のいかなるメッセンジャ-によって,このCl^-チャネルが制御されているかを調べたところ,アラキドン酸によって活性化を受けることがわかった。最近アラキドン酸によって不活性化を受けるCl^-チャネルが報告されているが,活性化を受けるCl^-チャネルはこれが初めてである。このCl^-チャネルは,細胞膜電位を形成するとともに,外部より障害が加わったりすると,アラキドン酸生成を介して,細胞膜電位を深くして,細胞を防御する機能を有すると考えられる。現在インタ-ロイキンとの関連について調べている。 (2)分泌側Cl^-チャネルについて。哺乳動物の単離した胃酸分泌細胞では、頂端膜がメディウムに露出していなく,パッチクランプ法によって,頂端膜側Cl^-チャネルの研究を行うことは不可能である。しかし,我々の研究からは,下等なアカハライモリの胃酸分泌細胞を,ヒスタミンH_2アンタゴニスト存在下で調整すると,漿膜側膜と頂端膜との極性を維持した状態で,また頂端膜がメディウムに露出した状態で標本として得ることができた。このことを,頂端膜中に存在するH^+,K^+ーATPaseの細胞外に面している部分のペプタイドを抗原としてポリクロナ-ル抗体を作製し,その抗体が細胞外表面の一部を蛍光抗体染色できることから示した。今後,セルアタッチパッチで,このCl^-チャネルの同定を進める予定である。
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