研究概要 |
1)ほとんどすべての細胞の膜電位は細胞内外のK^+平衡電位で規定されているが、本研究においてウサギ胃腺の壁細胞では細胞内外のCl^-平衡電位で規定されていることを発見した。この膜電位形成にあずかる側基底膜中のCl^-チヤネルは0.3pSという小さなコンダクタンスを有し、アラキドン酸(AA)やプロスタグランヂンE_2(PG)によってオ-プンすることがわかった(J.Physiol.1992).胃腺において、内因性外因性のAA,PGはストレス等によって誘因される粘膜障害に対して防御作用を有することは知られている。しかし、これらの物質が細胞レベルでいかなる作用を引き出しているかこれまで不明であった。本研究では細胞防御に関係するこのチヤネルの生理学的意義、その制御機構を明らかにした。このCl^-チヤネルは細胞内GTP〓Sにより不活性化されることを発見した(酒井ら。投稿中)。更に、細胞内フリ-ラヂカルとの関連も明確になった。 AAは他の細胞では、頂端膜中のCl^-チヤネルを不活性する例が報告されている。Cl^-チヤネルを活性化する例は始めてである。GTP〓Sは肥満細胞、クロマフィン細胞、腎CCD細胞、ヒト大腸がん細胞等のCl^-チヤネルを活性化すると報告されている。本研究のCl^-チヤネルがGTP Sにより不活性化される例は新しい発見である。このように、AAとGTP〓Sの効果が他の例とあべこべな現象は、apicalとbasolateralの極性の違いによる一般的現象なのか、壁細胞特有の鏡世界現象なのか是非調べる必要がある。 2)アカハライモリの胃酸分泌細胞を単離した状態では、細胞表面に頂端膜と側基底膜が混在することをプロトンポンプ阻害剤E3810を使うことにより示した。(竹口ら、Jan.J.Physiol.1992).更に頂端膜中のCl^-チヤネルを捕らえることに成功した。
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