本年度も、心筋および平滑筋のCaチャンネルの調節機構について検討を加えた。 1)心筋のCaチャンネル:Caチャンネルに対するG蛋白質の直接作用を検討するため、モルモットの単一心筋細胞にcellーattachedパッチを施しCaチャンネル電流を記録した。細胞外液にイソプロテレノ-ル(Iso)を投与しcAMPを介して作用するチャンネル活動の増大を解析した。Isoは10^<-7>Mの濃度でチャンネルの開口確率を2ー3倍に増大させた。また、10^<-8>でも開口確率の増大が認められた。この結果は、cellーattachedパッチにおけるcAMPを介する効果がwholeーcell clampでのそれに匹敵することを示すと考えられ、G蛋白質が直接チャンネルに作用するという経路の効果が比較的弱いことを示唆している。さらに、insaideーoutパッチでのrundownに対するGTPγSの効果を検討したが、有意の効果は認められなかった。これらの結果は、G蛋白質のCaチャンネルに対する直接効果の生理的意義に疑問を投げかけるものである。 2)平滑筋のCaチャンネル:モルモット結腸紐から単離した平滑筋細胞でCaチャンネルに対するAキナ-ゼの作用を検討した。Caチャンネルの活動がinsideーoutパッチで2分以上持続した例でAキナ-ゼの触媒サブユニットをATPと共に作用させたが、チャンネル活動に有意の変化は認められなかった。また、蛋白フォスファタ-ゼの抑制薬であるオカダ酸もCaチャンネルの活動に影響を与えなかった。これらの結果は、平滑筋のCaチャンネルではAキナ-ゼによる活動調節が弱いか存在しないという前年度に示された考えを支持するものである。
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