ラット海馬の培養ニュ-ロンを対象にして、グルタミン酸受容体の発達に関して次のような所見を得た。 1.海馬ニュ-ロンのAMPAとカイニン酸に対する膜応答は共通の受容体分子(AMPA/カイニン酸受容体)の活性化によって生じる。この受容体はCa^<2+>透過性と整流特性により、I型とII型に分類される。 2.急速外液交換法を用いて、I型、II型受容体のAMPA、カイニン酸に対する応答を調べた所、I型、II型受容体のいずれの場合もAMPA応答は急速に脱感作されるのに対して、カイニン酸応答には脱感作はみられなかった。 3.比較的純粋なI型反応は培養後約2週間以内の幼弱錐体細胞に見られ、純粋なII型反応は1ー4週間の培養期間中のいずれの時期においても小型の介在ニュ-ロンタイプの細胞で観察された。培養後2週間以上経過した錐体細胞ではI型反応に近いがII型の要素ももついわば中間型反応が見られた。おそらく成熟細胞におけるAMPA/カイニン酸受容体には、I型、II型が混在すると考えられる。 4.CA3/CA4野ニュ-ロンとCA1錐体細胞間の興奮性シナプスでは、CA1ニュ-ロンからはやい時間経過の興奮性シナプス後電流(EPSC)と持続時間の長いEPSCの両方が記録された。前者はAMPA/カイニン酸受容体、後者はNMDA受容体の活性化によるものであった。はやいEPSCの整流特性は純粋なI型ではなく中間型であった。 従って、AMPA/カイニン酸受容体は細胞種、発達の時期により異なることが明らかになった。この受容体のcDNAは4種類単離されており、今後は分子生物学的研究法も導入して、AMPA/カイニン酸受容体の発達についてさらに研究を進める予定である。
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