ラット海馬の培養ニューロンを対象にして、グルタミン酸受容体チャネルの発達に関して次のような研究成果を得た。 1.海馬ニューロンのAMPA/カイニン酸(KA)型受容体は、Ca^<2+>透過性が低く外向き整流特性を示すI型と、高いCa^<2+>透過性と強い内向き整流特性を示すII型に分類される。典型的なI型は培養後2週間以内の幼若細胞に見られる。一方、II型は少数の介在ニューロン様の特定の形態を示す細胞に発現し、このニューロンは1-5週間の培養期間中常に存在した。培養3週間以後の成熟細胞では、Ca^<2+>透過性、整流特性ともI型に近いが、ややII型の要素をもつ中間型細胞が多く見られるようになった。 2.典型的なI型およびII型AMPA/KA型受容体を発現している細胞をパッチクランプ記録により同定した後、細胞質中のmRNAを採取し、Reverse transcription(RT)-PCR法により、それぞれのAMPA/KA型受容体のサブユニット構成を調べた。I型は主として、GluR1とGluR2サブユニットから構成されるのに対して、II型はGluR1とGluR4サブユニットから構成され、従来の分子生物学的研究から予測された通り、II型のAMPA/KA型受容体はGluR2サブユニットを欠いていることが明らかになった。 3.CA3/CA4野ニューロンとCA1錐体細胞間の興奮性シナプスでは、CA1ニューロンからはやい時間経過の興奮性シナプス後電流(EPSC)が記録され、これはAMPA/KA型受容体の活性化によるものであった。シナプス形成後の、CA1ニューロンの尖端樹状突起上にはAMPAに対して高い感受性を示す部位が局在した。はやい時間経過のEPSCはその整流特性からほとんどがI型受容体の活性化によるものであると推測された。
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