新たに開発した後索切断・髄節分離法により、C4ーT1各髄節後索刺激で前肢運動ニュ-ロンに誘発されるPSPを解析して、各髄節から上腕二頭筋、上腕三頭筋、尺骨神経運動ニュ-ロンへのpremotorニュ-ロンの径路を解析した。その結果、1.上記三種の運動ニュ-ロンはいずれもC4ーT1などの脊髄節からもpremotorニュ-ロンの投射を受けること、2.上記運動核に投射する興奮性premotorニュ-ロンと抑制性premotorニュ-ロンは夫々の運動核に特有の髄節分布パタ-ンを示すこと、3.premotorニュ-ロンに対する一次求心性線維および皮質脊髄路線維の結合様式は脊髄節によって異なり、どの運動核に投射するpremotorニュ-ロンに対しても、吻側頚髄では両入力とも単シナプス性に、尾側頚髄では単および多シナプス性に結合すること、4.遠位筋(尺骨神経支配筋)運動ニュ-ロンと近位筋(上腕二頭筋、上腕三頭筋)運動ニュ-ロンを比べると、後者の方が興奮および抑制premotorニュ-ロンの髄節局在様式が複雑であること、を明らかにした。また、運動ニュ-ロンで記録されるPSPを指標として反射作用と下行路作用の空間促通の様式を解析することにより、premotorニュ-ロンは主として反射作用を伝達するもの、主として下行路作用を伝達するもの、両者を同等に伝達するものに機能分化していることが示唆された。急性実験による上記の回路解析に精力を注いだため、脊髄局所破壊の実験は緒についたところであり、次年度に完成させる予定である。
|