ネコ前肢脊髄節の介在ニュ-ロン機構を解析し、次の成果を得た。 1.premotorニュ-ロンの脊髄起源と経路:新たに開発した脊髄分離標本を用いて前肢運動ニュ-ロンへのpremotorニュ-ロン系を解析し、以下を明らかにした。(1)上腕二頭筋、三頭筋、尺骨神経支配手指筋の運動ニュ-ロンはいずれもC4ーT1の各脊髄節からpremotorニュ-ロンの投射を受ける。(2)興奮性および抑制性oremotorニュ-ロンの脊髄分布は、上記三運動核それぞれが特有のパタンを示し、特に遠位筋運動核のpremotorニュ-ロン群は近位筋に比し複雑な分布を示す。(3)premotorニュ-ロンに対する一次求心性線維および下行路線維の結合は脊髄節によって異なり、両入力とも吻側頚髄で単シナプス性、尾側頚髄では単および多シナプス性に結合する。これはどの運動核でも共通する。 2.運動ニュ-ロンPSPによるC6ーC8介在ニュ-ロンの入力の解析:C6ーC8分離標本を用いた運動ニュ-ロン記録の実験により、筋I群線維の2シナプス抑制の介在ニュ-ロンに皮膚、錐体路、赤核脊髄路線維が2シナプス性に、皮膚反射路の介在ニュ-ロンに錐体路、赤核脊髄路が単および2シナプス性に、上記下行路からの2シナプス路の介在ニュ-ロンに皮膚線維が単および2シナプス性に収束入力することを明らかにした。 3.直接記録によるC6ーC8premotorニュ-ロンの解析:T1運動核に投射するC6ーC8のpremotorニュ-ロンおよびその候補から直接記録して、それらの一次求心性線維および下行路線維入力の収束パタンを明らかにし、それが運動ニュ-ロンで得られた2の結果と合致することを確かめた。 4.premotorニュ-ロン経路の多様性:上記介在ニュ-ロンの入力パタンと脊髄内位置から、premotorニュ-ロン経路は多種類であることが明らかにされ、それぞれは運動の異なる局面で用いられることが示唆された。
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